ちょっと安堵

細見綾子第一句集「桃は八重」より(昭和16年上梓)

うすものを着て雲の行くたのしさよ

雲涼し人の言ふこと聞いてゐず

有名なのは前の句ですが、後の句大好き。涼しい雲、最近ではそんな日は、あっという間に過ぎてしまいます。

涼しさに心の中を言はれけり

そんな表情をしていたのかな。

涅槃像人に従ひ拝みけり

まだわからなくてもいい年齢。

ひし餅のひし形は誰が思ひなる

同感!諸説あるらしく、江戸時代に今の形に落ち着いたそう。

思ひだけ白魚に柚子したたらす

刺身かな?柚子の風味を効かせて。

考ふることもまぶしき薄暑となる

さびしさ、かなしさが根底にあるこの句集に、こんな句があるとホッとします。

むしろ秋へ歩み寄らんと海を見に

少しずつ、心が元気になっているのでしょうか。そんな気がして、ちょっと安堵。

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