句集を「編む」と言いますが、作者の思いを尊重し、順番に鑑賞していくと、ストーリーを感じられます。
最初は、単に共感句を挙げるつもりでしたが、既に多くの方がされているでしょうし、少し違うことをしてみようと思います。
細見綾子第一句集「桃は八重」より(昭和16年上梓)
表題「笹鳴」の章に、チューリップの句が並んでいます。綾子30代中頃の作品のようです。
チューリップ喜びだけを持ってゐる
チューリップ一つ離してさびしからず
圧倒的に有名なのは前の句で、私自身も衝撃を受けた一人です。こうして二句を並べて鑑賞すると、情景が浮かび上がり、より深みが増す気がします。
「桃は八重」には、明るく温かい、代表句がいくつも散らばっています。ですが、この句集全体を通して流れているのは、作者の孤独感でした。正反対なのに、隣合わせ。
若くして、両親、夫を亡くし、自身も病に侵され、そんな中で出会った俳句。その美しさに魅せられ追い求め、多くの人々と巡り合うのですね。
綾子は、一生懸命生きていた。私も、一生懸命生きなくてはいけないな。
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